生涯でがんに罹患する確率は男性65.5%(2人に1人)、女性50.2%(2人に1人)です。一方、がんで死亡する確率は男性23.9%(4人に1人)、女性15.1%(7人に1人)です。
2017年に女性が罹患したがんの第一位は乳がんで、女性が生涯で乳がんに罹る確率は10.6%(9人に1人)と推定されています。
一方乳がんによる死亡は2018年の女性で大腸、肺、膵臓、胃に次いで5位です。10年相対生存率も約80%で、一番罹り易いが治る可能性も高いがんと言えます。
約7割の患者さまが自覚症状で受診されています。
乳房のしこりや痛み、乳頭分泌を訴えられる方が大部分で、他に少数ですが乳房皮膚のエクボ状変化や腋のリンパ節の腫れ、稀に遠隔転移の症状(背部痛や咳、食思不振)の方もいます。
早期乳癌とはしこりの大きさが触診上2cm以下、転移を思わせる腋窩リンパ節を触れない、遠隔転移を認めない状態を言います。乳がん早期発見のメリットは10年生存率が90%以上、乳房を残せる場合が多い(温存手術)、生活の質を落とさずにすむ、経済的負担を最小限にできるなどが挙げられますので乳がん検診が大切です。
受診されますと視触診とマンモグラフィー、超音波検査を行います。さらに必要に応じてMRI検査や乳房専用PET診断装置(エルマンモ)による検査も行います。最終的な診断は組織診断(マンモトーム生検)で行います。
全身化学療法は通院治療センターにて落ち着いて行える環境です。最近では手術可能な症例でも患者さんが乳房温存手術を希望される場合や、病理学的完全奏功が期待される症例に対しては術前化学療法を積極的に行っています。
腋窩リンパ節診断は常勤病理医による術中迅速病理診断によるセンチネルリンパ節生検を行います。乳腺の切除は基本的に乳房温存手術(部分切除術)と乳房切除術(全摘術)に分かれますが、当院では10年以上前から形成外科と協力して乳房再建術に積極的に取り組んできました。
遠隔転移が認められた場合、全身にがん細胞が潜んでいる可能性があるため、薬物療法(化学療法、ホルモン療法、抗HER2療法)を行うことが基本であり通常手術は行いません。
当院ではがんゲノム医療連携病院としてがんの原因となった遺伝子変異を明らかにし、その変異に対して適切な薬物投与を行うことで症状緩和や延命治療に努めています。